多田千香子 | Pen&Co.(ペンアンド)株式会社・代表取締役CEOのブログ

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北京の「粉もん名人」に弟子入りvol.1

 「粉もん名人がいるんですよ」。北京に来たのは1月末、2年半ぶりに再会したY子さんの一言が決めてでした。なにーっ、それは行かねば。いましかない。即決しました。Y子さんもまもなく北京を去るし、いまの時期ならJALマイレージもディスカウントキャンペーン中でいつもより少ないマイルで特典旅行に交換できます。
 北京滞在2日目午後1時、いよいよ粉もん名人登場です。「こんにちは〜」。ほがらかな声が聞こえました。粉もん名人はY子さんの中国語の先生・楊曼玲(ヤンマンリン)先生です。東京に2年ほど留学、日本語ペラペラなのでした。笑顔が素敵だな。いっぺんに好きになりました。
 北京暮らしラストスパートのY子さんにとっては花巻、餃子、包子(パオズ)づくりをしながら中国語レッスンです。私がいるので日本語だらけになってしまい、申し訳ないのですが。香港、ロンドン、シンガポール…世界中で暮らして四半世紀のK子さんも来てくださいました。彼女いわく「これほど英語の通じない土地もない」とのことで、彼女も普通話をフツーに話すのでした。すばらしい。
 「餃子粉」や醤油、ごま油の瓶、セロリやナス…。楊先生はたくさん買い出した食材を提げてきてくれました。重かったでしょう。「いいのよ〜、ヨウズは赤ちゃんがいて、買い物が大変でしょう」。ヨウズ?Y子さんのことでした。日本語で話しても、名前だけは中国語読みするのだとか。
 河北省生まれの北京育ちだそうです。「ママや2人の姉が作っているのをよくみて」、自然と料理を覚えたとか。水餃子は大みそかや時間があるとき、よく作るそうです。
 「家庭の料理ですよ、プロとは違いますよ」。そういいつつもこだわりはたっぷりなのです。まずはお肉です。Y子さんが買ってきたお肉を見て目を丸くしていました。「どうしてこんなに白いのですか。これは違いますね」。えっ、おいしそうなのに。
 「餃子の中身に使うのは豚の前足ですよ」。ま、前足ときたか・・。北京のスーパーで豚ひき肉は2種類あるそうです。ひとつは「肥瘦」で、もうひとつは「瘦」。「肥瘦」は豚の前足をひいたもので、一般的にも比較的安い部分だそうです。Y子さんが買ってきたのは「里脊肉」というヒレ肉でした。さらに脂の多い部分をリクエストして、わざわざお店でひいてもらったものです。きっと上品でおいしいのができると思うけれど食は文化、「〜としたもんだ」という不文律も多いので。部位はともかく1キロも指定するとは、いったい何人前作ってくれる・・いや一緒に作るんだろう。
 肉あんは混ぜる野菜によって変化をつけます。組み合わせて混ぜません。日本ならいろいろ混ぜちゃいそうですが。先生が市場で買ってきたのはフェンネル、セロリ、ニラ、ナス、ズッキーニ、白菜でした。へぇ、餃子にフェンネル入れるんだ。何だかロシアのぺリメニみたい。近さを感じます。上海に住む先生のいとこには「これは何の野菜?」と訊かれるとか。
 セロリとズッキーニはスライサーで千切りにして塩もみします。ニラ、フェンネル、ナス、白菜も細かく切ります。それぞれしばらく置いたらふきんに包みます。ぎゅーっ、これでもかーっ。渾身の力を込めて水分を完全に絞り切ります。こうして「肉のうまみを野菜に吸わせる」のだそう。ニラの根っこを大ざっぱに切り落としたら先生にダメ出しされました。「もったいない!ほんの少しハサミで切ればいいです」。
 豚ひき肉1キロにみじん切りショウガ4かけ、刻んだ白ネギ2分の1本、砂糖大さじ半分、塩、しょうゆドボドボ、ごま油は大さじ2ぐらいでしょうか、混ぜていきます。「日本の人はチンダンダ(清淡的=あっさり)が好きですからねぇ」。塩も醤油も控えめにしてくれたようです。
 次に先生がお箸を手に力を込めました。「いいですか、同じ方向にお箸で混ぜてください」。右回りにぐるぐるぐるーっ、箸を高速回転させるのでした。