パリで習ったレシピ〜キュイジーヌ・マリーさん〜

 「料理が私の情熱そのものです。24時間、道路わきの飛行機を見ていても料理のことを考えているわ。休みなんていらないの」。パリに着いた翌日の日曜日、会いに行ったのがパリ郊外・オルリー空港近くに住むマリーさんです。空色のシトロエンで迎えに来てくれました。22年、勤めたエールフランスを今春、退職、好きな料理の道に進み始めたばかりです。働きながら休暇のたびに料理学校フェランディに通い、料理を学んだといいます。フランス南西地方出身の父、南仏エクサンプロヴァンス出身の母ともに料理好きで、彼女も5歳のころにはキッチンに立っていたとか。「パート・ブリゼ(練りタルト生地)でココナッツタルトを焼いたり、ガトー・オ・ショコラやガトー・ヤウルト(ヨーグルトケーキ・フランスの家庭おやつの定番)を作ったり・・・」。ミシュラン星付きシェフのレストランでも研修し、自宅のキッチンを改装してトレトゥール(おそうざい)のデリバリーを始めました。ずうずうしくも私と同世代かな・・・と思っていましたが、25歳の息子さんがいると聞いてびっくりです。「55歳なの」。ええ、うそー。「料理をしていると若くなるのよ」。茶目っ気たっぷりに笑いました。
 19歳の愛娘アンヌ=ロールがよきアシスタントであり、ご意見番でもあります。まずマリーが作ってくれたのはクレープでした。おしまいに入れたラム酒が香って、いつものクレープがぐっと深みを増しました。「バターは最後に入れてね。生地を寝かす必要はないわ。小さいころから作っていたわ。それでも1枚目は失敗するけれどね」。いいな、私もマネしよう。アンヌロールが一枚ずつ、ヴァニラシュガーをふり、三角形にたたんでいました。
 お次はトマトとエビ、グレープフルーツを自家製マヨネーズで会えたサラダです。マヨネーズを作るのも共同作業です。コーン油を少しずつ垂らすのは娘、卵黄とマスタードの入ったボウルを抱えて一生懸命、混ぜるのは母の役目です。ゆでたエビとトマト、グレープフルーツに和えるだけです。酢が入らなくてもグレープフルーツの酸味でさわやかで、苦労しがいがあります。でもアンヌロールは「ちょっとマヨネーズ、入れ過ぎじゃない」とズバリ言っていました。
 「ママのブルニー(ブラウニー)はクラスで一番人気だったわ。学校のフェット(行事)のときにはいつもブルニー」。ヌテラ味というか、ヘーゼルナッツ味のチョコレートで焼いてあるので軽く、食べやすい。いかにも子どもが好きそうです。お手製パンデピス(スパイスケーキ)やガレットデロワ(アーモンドクリーム入りのパイ)もよく持っていったとか。
 「イチゴと赤パプリカのタルトレット」「青リンゴとフヌイユ(フェンネル)のタルトレット」に、「アスパラガスとブルサンチーズのマドレーヌ」・・。具の取り合わせが個性的というか挑戦的というか。お菓子とおかずの間をうまくバランスを取るのが彼女らしさなんだろうな。「体によくて香り豊かな料理をいつも考えているわ」。小柄な彼女ですがパワフルで、いくつになろうと自分が主役でいいんだな、と思わせてくれました。
 帰りもメトロの駅まで送ってくれました。「サリュー!」。運転席の窓から伸ばしたきゃしゃな手を振って、さようならしてくれました。車の色がさわやかなパリの6月の空とシンクロして、かろやかに飛んで行くようでした。すがすがしい。一生懸命な姿、励ましてくれてありがとう。
☆教わったレシピ9
・一番人気のブラウニー
ラム酒入りクレープ〜
・パンデピス・マリー(軽くてスパイスがほんわか)
・ガトー・ヤウルト
・野菜のフラン〜アスパラガス、グリーンピース
・トマト、エビ、グレープフルーツのマスタードマヨネーズ和え
・ペスト(ジェノベーゼ)&マッシュルーム
・トマトコンフィとズッキーニのケーク
・アスパラガスとブルサンの塩マドレーヌ

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