多田千香子 | Pen&Co.(ペンアンド)株式会社・代表取締役CEOのブログ

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インドで盲腸?!<7>完

前日夕方の回診で主治医からは「明日には帰宅できるでしょう」と言われていた。何度も自分の右下腹部を指で押してみる。左も押して比べる。うん、大丈夫。痛みはない。問題は何というか気分が…。
6:00、ベッドティー。マリービスケット2枚とティーバッグのお茶。前々日ぐらいから栄養士からきつく、「食べなさい!」と叱咤されていたがほぼ手つかずだった。機内食のようにかけられたアルミ箔をはがすのもつらい。でもビスケットなら。ぽりぽり…。マリービスケットってこんなにおいしかったっけ。しみじみ。
9:00過ぎにやってきた第2主治医(第3までいた)から「痛みはない?本当に?完全に?家に帰りたいだけじゃないの?」と訊かれる。はいお代官様、本当にー。「下痢は?」「きょうはない」(本当はほんの少しあったけど)。もう限界、帰して。ようやく横に首が振られた(=インド式イエス)。やったー。午前中には帰れるはず。ベッドを降り、片付けして、靴まで履いてソファで待つ。ここからが長かった。「まだ点滴が残っている」と医師は言い、「書類を準備するのに手間取って」と、医療アシスタント会社のスタッフ(東京在住23年)が言う。1秒でも早く帰りたいのに。ジリジリ…。待たされるってツライ。
最後の注射を右手の甲に刺されたまま思う。帰ったら何を食べよう。何というかつわりみたいな感じで、何にも食べられない気がする。お豆腐、それも絹ごしなら食べられるかな。ちょうど金曜日、日本食材店「大和屋」で、ムンバイから届くお豆腐があるはず。家に着いたらドライバーに買ってきてもらおう。
16時、最初に診てもらった主治医の一団(いつも4~5人で来る)が現れた。「もう大丈夫ですね。何かあったらすぐ来てください。月曜にアポ入れとく?あ、用事があるの?じゃ火曜日?」とまた、うっかりペースにのせられそう。いかんいかん、キングスイングリッシュでも中身はインドだ。「いや、また痛くなったら来ます」とひ弱な英語で返す。「じゃ、8~12週間後にはオペね」。そうだね、日本でね。それでも一向に意に介さず「all the best(ごきげんよう。ココではお大事に、か)」と何度も言ってくれた。
18時半、ようやく病室を後にする。カルテと血液検査、CTスキャン画像(体温計もくれた。使いまわししないのかな)を渡されてロビーで迎えを待つ。もう明日になるかと思った。大和屋、もう無理だな…。絹ごし豆腐は幻になったが、ちっともかまわない。やっと出られる。思わずグッとこみあげ…てどうする。たった5日間、入院初級者Aコース的な定番・盲腸だというのに。ま、インドだし。もう入院はこりごり、痛くなったらダッシュで日本へ帰ろう。
19:00、「オカーサン!」スクール帰りの3歳8か月の丁稚ケイが背中から抱き付いてきた。そーっと、近づいてきたらしい。うわーん。12歳以下は面会NGなので、月曜日に学校に送って以来、5日ぶりになる。はー、やっと帰るよー。ずっと英語の世界にいたので、最初は日本語が出てこない。何というか、へっぴり腰が鍛えられた5日間だった。
20:00、帰宅。病院での胸焼け感が仮病だったみたいに消えて、お茶漬けをいただいた。えー、びっくり。ついでに体重を量る。うすうす感じてはいたが…うげげー。絶食3日、流動食2日にして3キロ増だった。なにそれー。確かに入院経験者の友人たちは「太った」「むくんだ」と言っていたな。ブドウ糖の点滴、恐るべし。
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