母の卵入りコロッケ
生きていれば16日、72歳になる亡き母のコロッケは、つぶしたゆで卵入りでした。いつのころからか…おそらく私が中学生か高校時代からです。私が言い出したか、母が何かで読んだか(NHK「きょうの料理」は長年、購読していました)、ともかく大好きでした。働く母にとってコロッケ作りは2日がかりでした。「冷まさんとパンクする」と、ゆでたジャガイモをつぶして冷蔵庫で一晩、おくのがお約束でした。学校から戻り、冷蔵庫に黄色い卵と茶色に炒めた挽き肉が見え隠れするマッシュポテトを見つけるとうれしくて、こっそり揚げる前のをつまみ食いして怒られました。
母の誕生日にあわせて久しぶりに作ろうと思い立ちました。4歳の丁稚ケイが30年前の私と同じように、かたちづくる前の「コロッケ未満」をパクパク食べるので笑いました。まあいっか、これで晩御飯にしてしまおう。
お弁当に入れようと朝、冷蔵庫を開けて、パン粉を切らしているのに気付きました。冷凍した自家製パンはあるのですが一時帰国前で、もう強力粉が尽きそうで、しかも北海道産「はるゆたか」で作ったパンをパン粉にしてしまうのは惜しいし…。桜餅を作るのに持ってきている道明寺粉があったので、まぶして揚げました。実家の台所のカウンターで、とっておいた発泡スチロールのトレーに粉やパン粉を入れ、衣をつけるのは私の役目だったなあ。仕事を終えて帰宅して、よくこんな面倒なものを作ってくれていました。インドと同様、実家のある岡山も何もなかったから、作るしかなかったのでしょうが。いまさら感謝しても遅いわ、と天国で母がブーたれていそう。ちょっと涙をぬぐいつつ、揚げたてをこっそりほおばりました。
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- 作者: 多田千香子
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