多田千香子 | Pen&Co.(ペンアンド)株式会社・代表取締役CEOのブログ

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自家焙煎「BLUE TOKAI」とコラボレーションイベント

 インドコーヒー界にサードウェーブの風を吹かせる自家焙煎「BLUE TOKAI」とコラボレーションさせていただけることになりました。デリー圏で有機野菜販売を手がける「トマト・プロジェクト」の尽力で実現しました。できたらいいねえ、という話はしょっちゅう、していたのですが、こういう与太話ってたくさんしているので、本当にできるなんて幸せです。ご縁、心から感謝します。
 もう8年ほど前になりますが、京都のアトリエ時代にも「コーヒー×おやつ診断室」と題し、山科にある自家焙煎「GARUDA COFFEE」とコラボレーションしました。なつかしいな。当時を思い出しながら、ペアリングを考えてみたいと思います。ぜひいらしてくださいませ。下記に当時、連載していたasahi.com(現在は朝日新聞デジタル)のコラム「論より、おやつ。」の当該回を転載します。

☆10月4日、自家焙煎「BLUE TOKAI COFFEE ROASTERS」とコラボレーションイベントを開きます。詳しくはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/oshirase/20160913

☆☆論より、おやつ。☆☆

コーヒー×おやつ診断室

外飲みコーヒー党だ。通勤時間ゼロの引きこもり、家で飲みだすとチェーンドリンカーになる。すきあらばスターバックスでサボっている。でも、あわよくば長屋をコーヒーの香りで満たしたい。家飲み解禁日に備え、おいしい淹れ方を教わりたい。「コーヒー×おやつ診断室」と題する会をアトリエで開くことにした。相棒は京都・山科の自家焙煎珈琲店「GARUDA COFFEE」のユカリさん。自宅ガレージを改装して1年前、店を開いた。白い壁と青いテントがすがすがしい。シンプルな手作り空間は映画「かもめ食堂」みたい。いっぺんで大好きになった。
せっかくだから相性のいいおやつを探ろう。ユカリさんに教えを請うた。相乗効果でおいしくなるのはチョコレートやバターたっぷりの濃い味、モサモサしたものという。キャラメルもいいらしい。「豆を焙煎すると糖類がカラメル化するのであうんですよ」。彼女のお勧めリストにも「キャラメルワッフル」があった。マグカップの上にのせて温めて食べる菓子…。覚えがあった。アムステルダムのスーパー「アルバート・ハイン(AH)」で3年前に買った「ストループワッフル」のことだろうか。シナモン味キャラメルを挟んだ薄くて丸いワッフルで、湯気に当てて食べる。キャラメルはとろけワッフルはしっけた。ワッフルはカリカリがいいんだけどな…。ゆかりさんは積極支持派だった。「あのフンニャリ感がいいんですよ。コーンフレークでも牛乳に浸り切ったふやけたのが好きなんです」。なるほど。
 滞欧歴が長いロンドンのミホさんにメールで尋ねた。薄焼き2枚でキャラメルを挟んでいるように見えるけれど、実は1枚をスライスしているらしい。何だか指まで切りそうだ。「オランダって料理はいま一つなのに、AH印のクッキーはおいしいし、キャラメルワッフルも『ちょっとシナモン』の加減が素敵だし、不思議な料理文化圏ですよね」。そうそう、おやつは充実していたなぁ。
味を思い出しながら試作した。ネットのレシピを参考にする。粉にイースト、シナモン、牛乳を混ぜて発酵させる。あれ、もう硬いんですけど…。薄焼きにしようにも延ばせない。無理やり焼いたがイヤな予感が当たった。モサモサにもほどがある。湯気どころかバーナーであぶってもフンニャリしそうにない。いつも焼くワッフル生地にシナモンを混ぜて焼くことにした。本場のとは別物になったが気は心、許してもらおう。
ワッフル以外には「モサモサバター濃い味」代表としてブルーベリー入りのフィナンスィエを焼いた。チョコレート系はレーズンチョコにした。貴腐ワイン・ソーテルヌに漬けたレーズンにカカオ70%のチョコレートを溶かしてからめる。パリの食材店「ダ・ローザ」のレーズンチョコを見習って作った。もっとも私のはレーズン一粒ずつにコーティングするのが面倒で、くっついているけれど。
「小魚もいけるはず」とユカリさんが言っていた。確かに。おせち料理のごまめにナッツを混ぜていたのを思い出し、「食べる煮干し」を薄焼きクッキー・チュイルに混ぜ込んで焼く。我が偏愛アイテムのハニーロースト・ピーナッツも「コーヒーおやつ選抜メンバー」に入れてあげよう。初めて米系航空会社に乗った20年前、小袋入りおつまみに配られて感動した。バターとはちみつをナッツにからめる。ちょっとベタベタするが味は同じだからいいことにしよう。
診断室には女子9人が集まった。深煎りは浅煎りよりカフェイン量が少ないこと、銘柄より焙煎度が味を決めること。ウンチクはあるけれど結局、味わいは科学より情け。「自分の好みを信じて」「愛と気合を込めて淹れて」とユカリさんは言った。愛知から来てくれたユーコさんは「冷えたコーヒーを温め直して飲むのもアリ」との言葉に「元気が出た」。私もおやつを説明する。「本当はもっと薄い」ワッフルに「本家はもっとお上品な」レーズンチョコに「売り物はもっとカラっとしている」ハニーローストピーナッツ…。言い訳ばかりしてパチモンぶりを露呈する。ま、我が人生も似たようなものか…。

<写真説明>
オランダのストループワッフル。パリ留学時代の思い出=2005年11月、多田写す
ワッフル×コーヒー
自家製ハニーロースト・ピーナッツ
小魚入りチュイル
=いずれも写真家・岸千鶴さん撮影