多田千香子 | Pen&Co.(ペンアンド)株式会社・代表取締役CEOのブログ

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行方不明、そのあと

 タクシーUberでの学校帰りはメーンゲートで車を降り、アパートの敷地を歩いて部屋に戻ります。が、5歳のケイが遅れています。「もう歩けない」。眠そうにしていたので仕方ないのですが、私もINAマーケットで買った野菜にケイのリュックもあり、両手がふさがっています。早くおいでよー。そう声をかけたのですが、ついにベンチに座ってしまいました。ちょっとカンベンしてよ〜。「もう無理ー」。って言われても、抱っこできないし。行くよー、と声をかけたのですが動く素振りをみせません。しゃーない、先行くよー。荷物を部屋に置いてから引き返そう。いままでも敷地内のコンビニに行く間、1人で遊ばせていたこともあったし、大丈夫だろうと思ったのです。
 26階の部屋に荷物を置き、ベンチのある場所に戻ってみたら、こつ然と消えていました。姿がありません。成田や久留米のモールでしょっちゅういなくなるのですが、そのたび肝を冷やした感覚がよみがえってきました。日本ならまだしもインドだから、ちょっと心配になりました。遊具のあるエリアやゲート、駐車場、2カ月前まで住んでいた棟にあるコンビニまで行きましたがいません。神隠しにあったみたい。守衛にも尋ねましたが「見ていない」といいます。どこいったん。
 ノーテンキ母も青くなってきました。悪いほうへ想像はふくらみます。ゲートの中とはいえ、いろんな人が入るし…。こういうときに限ってケータイが充電切れで、コードも車に置き忘れてしまいました。ケイは学校からもらったばかりのIDカード(父母の名前と携帯番号が書いてある)を首からぶらさげていたので、ひょっとしたら見つけた人が電話してくれているかもしれないのに。
 20分ぐらいして万事休すの気分で、自力で戻ってきてくれたら…と部屋に戻りました。玄関に、ちゃんと黒い靴が並んでいました。うそー。ケイは何食わぬ顔をしてトミカで遊んでいました。どうやって戻れたのー。ベンチから棟までは1人で歩き、エレベーターでは顔を覚えている守衛さんが、ケイには手の届かない「26」のボタンを押してくれたようです。「オカーサンのおともだちもいた」。どうやらお隣さんがたまたま、乗り合わせていたようです。守衛さん、お隣さん、おそらくロビーの扉もだれかが開けてくれたのでしょう。本当に目線があること、ありがたく思います。ちょっと前だったらじっとその場を動かなかったのに、成長したってことかなあ。しかも私がいない間、ハウスキーパーに頼んだのでしょう、カルピスを飲んだ形跡がありました。靴がキチンと並んでいたのも、キーパーがしてくれたのでしょう。これまたありがたい。「ケイ、また行方不明になったね」。そういうとケイに返されました。「いなくなるの、オカーサンでしょ」。そうだねえ。