多田千香子 | Pen&Co.(ペンアンド)株式会社・代表取締役CEOのブログ

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インドで財布なくしました(下)

赤い財布をなくしたと思われるメトロの「グルドロナチャリヤ」駅に戻れたのは、乗車して2時間後でした。息急き切って階段を駆け上がります。窓口に忘れたとしたら、そのままあるわけないので、向かいにあるセキュリティチェックに近づきました。やにわにカーキ色の制服を着た背の高い警備員が、「ジャパニーズ?」とニヤリとしました。わ、ココだ、やっぱり落っことしていたんだ。カバンをX線検査に通す際に、こぼれ出たんだ。で、財布はーっ。祈るような目線をなだめるように、首をゆらゆらさせながら(インド式イエス)、「ノープロブレム」と繰り返しました。ほ、ほんまかいな。で、財布はどこー。繰り返すと「入れ」と手招きされ、改札の中の事務室に案内されました。ちー、出し惜しみするなあ。あるの、ないの、どっちなのーっ。
「ファイン」と言うから、どこかにはあるのでしょう。でも中身は無事なんだろうか、お願い早く会わせて、って、誘拐された我が子みたいな心境になったのは前日、デリーに戻る機内で「64(ロクヨン、誘拐事件がテーマ)」を観てしまったからか。
一安心と、もどかしい思いが半々の私は椅子に座るよう促されました。前には警備ではなく駅員らしき人がいます。また「ジャパニーズ?」と訊かれ、簡単な事情聴取です。ノッポの警備員はどこかに電話しています。ヒンディー語なので「ジャパニーズ」しか分かりませんが、上司にでも報告しているのかな。なかなか財布を出してくれません。我が子を返して欲しければ身代金、じゃなかった、袖の下をよこせと言われるのかな。こういう国なのでありえます。まあ100ルピーぐらいなら…。
と、身代金対策まで考えたところで、目の前の駅員が机の引き出しのカギを開けて、見覚えのある財布を取り出しました。やったー。クレジットカードもデビットカードもそのまま、現金もおそらくそのままのようです。パスポートを持ち歩いていてよかった、すぐに名前を確認、現金も500ルピー×6、100ルピー×2…と、札の種類別に記録していきます。書類3,4枚にサインして無事、私の手元に返ってきました。
改札のわきから出ようとしたら、別の警備員がやってきました。物欲しそうになにごとか言われましたが、あなたが見つけたわけじゃないし、全然関係ないやろっ。知らん顔して立ち去りました。ううー、日本なら戻ってくるのが当たり前でしょうが、トラップ大国インドでは奇跡です。X線検査のどこの段階で落っこちたのかは分かりませんが、役人のフトコロに入らないまでも、出入り口あたりだったら乗客に持っていかれたかもしれません。神様ありがとう、まだまだ私はついている。