多田千香子 | Pen&Co.(ペンアンド)株式会社・代表取締役CEOのブログ

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台南の人気店で小龍包づくりに挑戦

 とにかく台南は路地裏だろうと小さな飲食店だらけです。台湾はどこもそうなのでしょうが、とりわけ台南はすき間あらば食べ物屋さん、という感じです。
 南台科技大学・鄭メイリン先生が連れて行ってくれたのが「上海好味道小籠湯包」です。台南で小龍包といえば、真っ先に名前の挙がる人気店です。ちょうどお昼どき、長い列ができていました。でも先生が予約しておいてくれたのですぐ入れました。円卓にヨッコイショ、と陣取ります。円卓を前にするとなぜか胃袋がファイティングポーズに入り、食べるぞー、と燃えるのはなぜだろう。
 注文はメイリン先生にお任せしました。先生はお料理好きで、おうちではもっぱら魚と野菜を食べ、2品は必ず作るそうです。
 キョロキョロと店内を見渡すと、壁にずらーり、コンビニにあるような大型冷蔵庫がありました。見るとお客さんが勝手に開けておかずを取って行っています。いいな、気軽で。私も私も。お行儀よく盛られた冷製ナスのみそだれ、ゆでピーナッツ、ゆでインゲンの皿を持ち帰りました。どれも20NTドル(50円)ほど。中華は野菜がおいしいのでいいな。
 まずやってきたのは小龍包です。アツアツの7個が70NTドル(200円)。えー、びっくり。安い。春巻き、ワンタン、ジャージャー麺、私の好きな雲白肉はモチロンひとり占めしました。エビ入り蒸しギョウザが秀逸でした。エビギョウザではなく、あんは豚肉でエビが1尾、入っています。壁には日本語で解説がありました。「一口噛んで甘い肉汁が溢れ、エビの甘みを味わい、口の中には香ばしい豚肉の味、弾力のある皮、独特のソースに合わせ、薄皮多汁の口当たりは誰もたまらずヨダレが出ます」。薄皮多汁!なんと素晴らしい四字熟語ではないでしょうか。エビがプリプリしていて、やわらかくて。豚肉にもあうんだな。マネしてみよう。エビは嘉義産だそうです。
 案内してくれたのはマネジャーの陳信彰さんです。南台科技大学でも外部講師として点心づくりを教えているそうです。従業員は35人、
インターンの学生も受け入れているそうです。
 お腹いっぱい食べて空きテーブルが出始めたころ、厨房に案内してもらえることになりました。陳さんが「好味道」と赤字で書かれた白いキャップにエプロン、マスクを渡してくれました。でも厨房はようやく人がすれ違う程度だし、アツアツの蒸籠が縦横無尽に行きかっているし、さすがに赤子連れでは厳しいかな。姉にやってもらおう。「いいよ、やりなよ」と私に譲ってくれようとした姉に、「いや、やって!」と言い張りました。そんなに言うんだったら…という感じで、戸惑いつつ帽子とエプロンを身に着け始めた姉が、パァッと笑顔になりました。「わ、やろう。面白そう」。格好は大事だな。とはいえ私も勧められ、ちゃかり小龍包作りに参戦しました。
 小龍包は1個22g、1日に2000個ほど作るとか。皮は中力粉と冷水のみの「冷麺」だそう。やはり小龍包の黄金比率の18回、タックをとって肉あんを包みます。嘉義の大学でもやらせてもらいましたが、やっぱり難しい。陳さんいわく、職人に皮作りまで任せられるのに3カ月かかり、包むのを担当するには1年ぐらいかかるそうです。
 エビ入り蒸しギョウザから姉だけ挑戦です。両手の親指でギュッ!と押さえるだけです。それでも姉は指を阿波踊りのように躍らせて、え、どこをどう持つの?こう?違うか…と苦戦。そばで見ていると何でできないの、違う違う、ココをこうたたむんだよー!あー見ちゃおれん、と、我が姉ながらツッコミどころ満載です。ごめんよ、やると見るは全然違うのを知っておきながら。リズミカルに簡単そうに見えるのに、自分でやるととても難しいのです。でもメイリン先生はさすが台湾小姐、すぐにコツをつかんでスイスイと作っていました。
 最難関はワンタンでした。肉あんをハンカチ大の薄い四角い皮に塗りつけ、落下傘のようにたたみます。姉はもうお手上げの様子、ぐしゃぐしゃと包んでいました。
 エプロンを外してテーブルに戻りました。大げさ大魔王の私に比べ、姉はあんまり感情を表に出さないのですが、めずらしく「楽しかった!」ときっぱり。自分たちで作ったのを蒸してもらい、アツアツをほおばりました。「自分で作ったせいかな」「おいしいねぇ」。アチーッ、ユウチャンリョウクン、気を付けてー、と言いながら我が舌はしっかり被弾しつつ「薄皮多汁」を堪能します。子どもは猫舌で、本当にかわいそう。大人でよかったわホント、オホホ。
  「やっぱり自分で作ると楽しいなぁ」「おいしいなぁ」。姉の言葉に改めて思いました。ほんの「サワリ」であっても、自分で手を動かすのと見るだけとは全く別次元のおいしさにつながるんだな。もっとドシドシ「する経験」をみんなに広めるのが私のミッションだな。
 陳さんに丁寧にお礼を言いました。日本にも出店しないのですか。そう振ると「話があれば…」と言いつつ、あまり業務拡大を考えているようではありませんでした。本当に、出店してほしいような、ずっと1店舗を守ってほしいような。
上海好味道小籠湯包 http://hwd.com.tw/web/