エビフライとシェアハウス
コロナ禍のためにインドから緊急帰国した2年前、シェアハウスで暮らしはじめました。とりあえずアパートが見つかるまで…というつもりでしたが、居心地のよさもあって結局、1年8か月を過ごしました。
昭和時代は和菓子工場で働く女性のための寮だったという建物は、おしゃれにリノベーションされ、起業家向けのシェアハウスとして活用されていました。シェアオフィスやセミナールーム、広いリビングには代々の住人が残していった本もあってたくさんありました。キッチンには業務用のピザオーブンまであり、コロナ禍が落ち着いたころには元・住人も集まってピザを焼いて楽しみました。
なかよくなったのが東京出身のKさんです。よくキッチンで一緒になりました。彼女はオクラやキュウリをきちんと塩もみするような料理好きでした。若いのに、きちんとしているなあと感心しました。
お弁当を毎朝、つくっている私にある日、かおるさんが「私のもつくってほしい」と頼みに来ました。
2人分も3人分も一緒…と、シェアハウスでの「シェア弁当」を気安く引き受けました。リクエストを尋ねましたが「何でもOK」「嫌いなものもない」とのこと。任せてくれるのはありがたったです。
何でも「おいしい」と言ってくれて励みになりました。とりわけエビフライが好物でした。在宅勤務だった彼女は毎朝、コーヒーを淹れながら私がつくったお弁当のふたを少し開けて、中身をチェックするのですが、ある日、「キャー!」という声がしました。「私、エビフライ、大好きなんです!」
冷凍食品の出来合いを買ってあげるのとは全然、違って、ぷりぷりしておいしさは格別です。
エビフライを揚げたり、オクラに塩をふって小さなまな板に転がすたび、彼女を思い出します。