堂島MUJICA閉店を嘆く1人として
大阪・堂島で紅茶専門店「MUJICA」が25日、61年続いた店の歴史に幕をおろしたそうです。私にとって「閉店」がこれほどショックな店もないかもしれません。大阪勤務時代の7年間、どれだけ通ったか分かりません。朝刊出社前の新聞精読スペースであり、夕刊勤務後の昼食や休憩の場所でした。福岡へ転勤し、パリへ飛んで京都へ住み始めてからも月1回、必ず行っていました。朝日カルチャーセンターで講座をしていたので、有志のみなさんとアフターお茶会をしていたのです。そんなこんなで足かけ10年、お世話になった店でした。
窓が広くて明るくて、新聞を読むのにちょうどよかったのです。ずらりと並んだ紅茶缶のコレクションは、目が疲れるとぼんやり見つめ、世界旅行をしている気分になって好きでした。キャッシュメモを10枚集めると紅茶の葉っぱがもらえる仕組み、控えめな「禁煙」の提案の仕方、奥にあるカフェ「トゥレジュール」のこれでもかと入ったウニパスタ…。いつ行っても選びきれないほどたくさんの紅茶のメニュー表を眺めるだけ眺め、たいていは友人に勧められたアイスシチュードティーやミントフレークティーを頼んだものでした。
最初の我が子「パリ砂糖漬けの日々」が出た直後、店主の堀江さんが「本って売るの、大変だよねえ」と言いながら買ってくださったのにも感激しました。
新聞記事には「コンビニエンスストアやカフェのチェーン店に押され」て客が減っていた、とありましたが…。そんなー。私が通っていた15年前からスターバックスもドトールもすぐ近くにあったし、いわんやコンビニをや。そもそもコンビニとMUJICAは比べられません。
そんなことをインドで思いながら試作のムース・オ・ショコラをMUJICA特製のカップに盛りました。最後にもう1回、行きたかった。名もなきファンの1人ですが、店主にお礼を言いたかった。MUJICAの跡地にスタバができたら、ものすごく複雑な気分になりそうです。