多田千香子 | Pen&Co.(ペンアンド)株式会社・代表取締役CEOのブログ

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ハウステンボス「エリタージュ」

 本能に近いことは、1人でもする。食事しかり、睡眠しかり。1人ではしないことは、自分の本能じゃないのよ。たとえば、旅。一人旅しない人は、本能からやりたいことじゃないのね、旅が。友人の金言です。そう考えると、ハウステンボスへ一人旅したのは、かなり本能的行為かもしれません。めざすは比類なき仏料理店「エリタージュ」。10年ほど前に読んだ村上龍の「はじめての夜 二度目の夜 最後の夜」はじめての夜 二度目の夜 最後の夜で描かれ、「大人になったら行くぞ」と心に決めていたのです。いや、当時だって大人だったし、逆に今、一流のフレンチが似合う大人なのかと言われたら、こうべを垂れるしか、ないのですが。ええい、いてまえ。誰かの結婚式で着た黒のワンピースを引っ張り出し、気分は淑女。ランチなら、一人でも許されると踏んで福岡から佐世保へ向かいました。10年越しの思いを胸に。
ハウステンボスの入口には、私専用の黒いクラシックカー(特注品だとか)のお迎えが。園内で一番奥にある迎賓館へ。まずはソファへ案内されます。シャンパンを頼み、メニューを選びました。もう酔っ払い気味です。1万3000円のコースにしました。食事の部屋は、平日ということもあり、私の貸切。団体とは別の部屋にしてくれたようです。
 もちろん、上柿元シェフの料理も堪能しましたが、それほど印象強さはなかった。何がすごいって、サービスです。給仕の方が絶妙のタイミングで声をかけてくれ、一人の食事の孤独感をまったく感じさせないどころか、極上の空間を独り占めしている贅沢感たっぷり。もちろん全席禁煙です。給仕の方も、運転手の方も、私の名前を呼び、慇懃無礼でもなく、控えめにやさしく見守っている雰囲気。サービスするのが楽しくてたまらないといった風です。龍さんはいつもどこに座るのかと尋ねると「今お座りの席が、村上先生のお席です」。クククー、憎い返事。やられました。
 デザートは「お好きなものを、お好きなだけどうぞ」と、ワゴンに乗せられてやってきました。ガトーショコラや栗のタルトがホールのまま、8種類。丸ごと出てきました、私のためだけに。で、では、全部。アイスクリーム4種が一皿目。今まで食べたことのないほど、くどくなく、上品な味わい。あまりのおいしさに言葉もありません。ケーキや桃のコンポートが2皿目、シュークリームやショコラを3皿目。さらに、コーヒーとともに出されたプティフールとアーモンドチョコは、さすがに食べられません。ケーキ箱に持たせてくれ、宿泊先のホテル・ヨーロッパへ送ってもらいました。
 夜は部屋で、園内で買った揚げたて薩摩揚げ。何じゃそりゃ。何だか現実じみてきたので、エリタージュでもらったケーキ箱を開けました。食卓で出されたよりずいぶん多く、山盛り入っていました。あのメートルさん、よほど食い意地の張った客と思ったな。どこまでも、小粋。
次の野望は本丸・ディナー制覇です。ふふふ。