イラクで餃子のKさんと
「イラクで餃子を作ります」。受信トレイに浮かぶタイトルに目がくぎづけになりました。1年半ほど前でした。バグダッドで働くKさんからでした。日本人の同僚15人と復興プロジェクトに携わっておられます。バグダッドの暴動による道路閉鎖をかいくぐり、アンマン→バンコクを経由してこのほど、無事に一時帰国されたのでした。短い滞在中、アンマンのデーツを土産に、東大前の近江屋洋菓子店まで来てくださいました。それにしても近江屋洋菓子店、近ごろマイ・応接間と化しています…。
スライドショーのはじまりです。「米軍が撤退してどうですか」とまぁ、我ながらひどく雑な質問だな。もう何十回と同じ質問をされているだろうに、Kさんはていねいに説明してくださいました。興味深いのはやはり日常の暮らしです。ふだんはイラク人コックによるまかない付き。イラクではコメをよく食べ、アルコールもOKだそうですが、それにしたって飽きます。休みには日本人の同僚と「和食パーティー」です。餃子は最初、皮から手作りしたそう。2度目は日本から皮を持ちこんで15人前を作ったそうです。年末年始には年越しそばやおせち料理もどきも。レバノンで手に入れたマグロのお刺身、エビのてんぷらを楽しんだそうです。まるで映画「南極料理人」みたい。いや、南極はコック付きですがKさんたちは「バグダッド自炊人」です。すごいなー。日本や隣国ヨルダンの韓国食材店などで材料を仕入れては、なじんだ味を再現するそうです。チグリス・ユーフラテス川が流れるだけあって野菜はそれなりに豊富だそう。やはり水は恵みだな。「でも出かけられないんじゃ・・」とKさん。
その言葉の通り、外出は自由にできません。元・米兵の警護のもと防弾チョッキを着用するそうです。自由に行動できないって想像を絶するつらさです。はーっ。ため息が出ます。「流れ弾に当たるのもここらへんで交通事故に遭うのも、確率的にたいして変わらないでしょう」。Kさんはサラッと言いました。ま、そりゃそうかもしれませんが。たいていの場所なら「行きたい!」と言ってしまう私も、「バグダッド行きます、行きたい」とは言いませんでしたから。Kさんなら口笛を吹きながらヒョイヒョイ、流れ弾をよけていくような気がします。でも、すごいなぁ、やっぱり。
1カ月半ごとに1週間、バグダッドを離れてレバノンで休みを過ごすそうです。ベイルートの世界遺産・バールバック遺跡もすばらしいのですが、やっぱりレバノン料理に興味しんしんです。パリの住まい近くにレバノン惣菜店があって、よくハモスなんかを買ったっけ。Kさんのカメラ画像に見入ります。マンゴーののったパフェがおいしそうに写っていました。パン店の窯からは平べったいピザのようなパンが焼かれていました。チーズをはさんで食べるそう。うわー、おいしそう。養殖ニジマスの開き、味噌焼き?風も。
本当にタフのひとことだわ。でもKさんは「仕事ですから」とあっさり言われます。インド駐在が長いTさんも「仕事ですから」と言っていたっけ。この世代には勝てんなー。いつも思います。世代でくくるのもどうかと思いますが、やっぱりニッポンのお父さんはエライ。私も、もっとやれるはず。人生出し惜しみせず、できることをじゃんじゃんしていこう。鼻息荒く、Kさんを見送ったのでした。次の帰国は半年先。また会えるのを楽しみにしています…って、そのころ私はどこを漂っているんだろうなぁ。
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