多田千香子 | Pen&Co.(ペンアンド)株式会社・代表取締役CEOのブログ

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なぜ手作りをするのか

 今冬に出版予定のレシピ本は「パリのチョコレート」がテーマだけに、定番フランス菓子も紹介する予定です。ただ、エクレアの100本ノック試作をしていてふと思ったのです。読者の人たち、本当に作ってくれるかなあ。日本ならコンビニでだって売っているものなあ。クリームを炊いてシュー生地を焼いて、さらにグラサージュ(チョコのコーティング)まで作らないといけなくって、いくら簡単な作り方を模索したって、ワンボウルで作れるというわけじゃない。おやつレッスンでみなさんに訊きました。手作りするわけは何ですか。インドなら話は簡単、「ないから」作るけれど、日本ではどうだったっけ。パンづくりが得意なRさんは言いました。「できていく過程が好き。粉の香りとか」。ああ、そうだった。あまりに毎日、作り続けていてうっかり、忘れそうになっていました。シューがふくらむ瞬間、できたてのクリームを鍋からこっそり、お味見するひそやかな喜び…。どれもこれもおカネじゃ決して、買えないものばかりです。自分好みの味にできるのもまた楽しみです。手間をかける時間とおいしさ、本を通じて提案できたらいいなと思っています。
 海外暮らしが長いK子さんが言いました。「日本は必ず、どこに行っても<お待たせしました>って言われますよね」。お子さんが「いや、ぜんぜん待ってないのにね〜」と言ったとか。ああ、分かるなあ。確かに日本は<時間をかけない、とらせない>ことが金科玉条です。それがたぐいまれなる規則正しさにつながっているわけで、確かにすばらしいのですが…。「忙しい」とか「バタバタしている」とか、日本の人はよく言う気が…。私は20年来、使っていません。なぜなら新人記者時代「忙しいというな。お前の時間管理能力が低いだけだ」と言われたのがトラウマ…いや三つ子のタマシイになっているからです。ごもっとも。単に、もたもたしている、だけなのでした。