ダージリン、紅茶をめぐる旅（７）元・茶摘み娘から紅茶を買う

　「ワタシ、ニホンでユウメイです」。街角で出会ったら絶対に無視するところですがダージリンの茶園マジックで、元・茶摘み娘の「５秒オバチャン」ことクスンさん宅へ上がり込みました。このあたりでは室内はちゃんと、靴を脱ぐんだな。インドの家は暗いのがデフォルトと思っていましたが、ここは台所も明るくきれいです。ぐずる４歳の丁稚ケイにはバナナをくれました。私にはとっておきのお茶を出してくれるようです。クスンさんはコンロにお鍋をかけています。お湯が沸いたら火を止め、手づかみで茶葉をポイッ。すぐお皿のようなふたをします。「いい葉だから、５秒でダイジョウブです」。へえ、そんなに短くていいんだ。茶こしを通してカップに注がれた紅茶は、スッキリとした味わいでした。「スーパー・ファイン・ティピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコー…」。歌いながら茶葉の等級を教えてくれました。最上級、のようです。
　値段を聞くと１００ｇ３００Rs（６００円）と言います。等級が本当なら前日、広場にある紅茶店で買ったものの半額です。もっともよほどの額を言われない限り、ハナから買おうと思っていました。ダージリンで茶摘み娘（モト、ですが）の直売、なんてストーリーは最高だし。そのままガサッとレジ袋に入った葉っぱを渡されるのかと思ったら、ちゃんとラベルを張り、摘みたての新芽をあしらい、その辺にあったのか、なぜか救急テープでベタベタと封をしてくれました。「ファクトリーにはナイショです」。口に指を立てて見送られました。と、言う割にあっけらからんとしていて、何とも憎めないのでした。ありがとうー、５秒おばちゃーん。

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